昨年12月のポーランド・カトヴィツェの「気候変動会議(COP24)」で全員一致でパリ協定が再確認された直後、カナダのトルドー政権は45億ドルを化石燃料産業に資金援助、パイプライン購入にも数十億ドルを投入した。COP24は本当に機能するのか?(訳者)
極右ポーランド政府新炭鉱開発を発表
ポーランドのカトヴィツェで、各国政府が2015年のパリ協定の実行を再確認したことは悪いことではない。しかし、再確認決議は拘束力がなく、世界はこれまでと同じ姿勢であるなら、悪いことだ。
だいたいこの種の会議は象徴的なものが多く、COP24が石炭産業が盛んなポーランドで開かれたというのも、皮肉な意味で象徴にすぎないことを表している。しかも、この会議の数日前に極右ポーランド政府が新炭鉱開発を発表し、ポーランド・パビリオンで石炭原料の壁や石鹸を展示したのだ。
確かに、一昨年にボンで開催されたCOP23で協議続行だけを決議したことに比べれば、COP24はパリ協定を再確認し、その実施ルールを採択した点で「前進」と言えなくはないが、そのルールは強制を伴わず、各国の自発性に任されているので、とても決議とは言えない。かつては自発性に基づいて削減目標を申告し、今度は強制力を伴わない実施ガイドラインを決めただけである。
しかも、削減量の計算法は各国政府に任されているので、抜け穴が見え見えである。ミハウ・クリティカ議長の「COP24は素晴らしい成果を世界に与えた。パリ協定の希望に満ちた枠組みを大きく前進させた。未来の世代は我々が重大な歴史的瞬間に正しい決定をしたと感謝するだろう」という総括は、噴飯ものだ。
むしろ水没した沿岸地帯を逃れ、大規模な農業弊害に苦しむ子孫は、地球温暖化に根本的な対策を講じなかった我々親世代を恨むであろう。環境崩壊の可能性は大きくなるばかり。最悪事態の到来まで、もう何年もないだろう。
地球温度1・5~2度上昇で生態系は崩壊・種の大量死滅が…
2カ月前、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)は、産業革命以前より地球温度が1・5~2℃上昇したことがもたらす影響に関する報告書を発表した。1・5℃と2℃では大きな違いがあるが、1・5℃上昇でも大変なことになる。
すでに地球温度は1℃上昇しており、このままだと2030~2050年に1・5℃上昇になると、IPCC。1・5℃上昇が常態化すると、生態系崩壊など長期的影響が顕著になると、IPCCは「強い確信」で述べている。
また「1℃の温暖化で昆虫の6%、草木の8%、野菜の4%が失われ、2℃温暖化で昆虫の18%、草木の16%、野菜の8%が失われる。1・5℃温暖化で沿岸資源が喪失、農業と漁業の生産性が低下するが、2℃温暖化だとそれが破壊的レベルになる」とも述べている。種の大量死滅も予想される。 「CO2濃度上昇で海洋酸性化が促進され、それが温暖化を増幅する。魚類など多様な種の生存が危うくなるのは確実」だと。
こういうIPCC報告は目新しいものではない。温暖化が数十年先にどんな結果を招くかに関しては、多くの研究がある。「地球がもう後戻りできない点を越えてしまった」こと、氷柱熔解が過小評価されていること、つまり沿岸地域の水没が予想以上に早く起こること、具体的には最低6メートルの海面上昇が起きることが発表されている。
強制力なき「パリ協定」が実行されても地球温暖化は避けられない
環境NGO「気候に関する行動追跡」(CAT)によれば、パリ協定の取り決めが全部実行されたとしても、2100年までには地球温度は2・2~3・4℃(平均して2・7℃)上昇するという。つまり、温暖化の速度を緩和させるだけで、温暖化そのものは避けられないというのだ。しかも、パリ協定の実行を確実にする制度的強制力はなく、各国の自発性かピア・プレッシャーに委ねられているだけだ。
COP24の成果といえば、2024年以降各国が温室効果ガス排出量と削減量を2年ごとに報告するという取り決めである。しかし、排出量と削減量を測定する科学的に信頼できる共通方法の採用を決めずに、各国の裁量に委ねたのである。
カナダの環境保護NPO「デスモッグ」が言うように、「カトヴィツェ最終合意文書は、国別削減量増加を具体的に表示することを求めず、2020年に削減量を増やすことを考慮することを要請しているだけ」なのだ。
「各国は約束した削減量を5年ごと、つまり2020年と2025年に増やすことが望ましい」という2015年のパリ協定を再確認しただけなのだ。つまり、我々は5年間有害ガスの削減状況が分からないままになる。 笑い話がある。トランプ大統領のエネルギーと環境担当特別補佐官のウェルズ・グリフィスが、こともあろうに化石燃料プロモーション演説をやって、抗議と嘲笑を招いた。『デモクラシイ・ナウ』のエイミー・グッドマンがインタビューに向かうと、文字通り走って逃げ、「ハラスメント」だと被害を訴えたという逸話がある。
こんな会議が未来世代が感謝するものになるだろうか?(出典…Zコミュニケーションズ・デイリー・コメンタリー、2018年12月22日)